七代目孫左衛門

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help リーダーに追加 RSS アルセーヌ・ルパン全集/35年前のポプラ社版

<<   作成日時 : 2005/03/19 18:19   >>

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アルセーヌ・ルパンである。
怪盗ルパンである。

ルパン3世じゃないよ(笑)。

怪盗紳士である。



初めてルパンシリーズを読んだのは、小学5年生の時だった。
学校の図書室で借りたのである。
でも、借りるまでが大変だった。


当時通っていた小学校は、木造2階建てのオンボロ校舎だった。
どのくらいオンボロかというと、たとえば、2階の教室で、掃除の時間にバケツをひっくり返して水をこぼしたとする。普通なら、その床を雑巾で拭けば事が足りるはずであるが、ここでは、それだけでなく、数名の児童が、雑巾を持って、真下の教室まで急行するのだ。つまり、2階の床板の隙間からもれて、さらに1階の天井の板の隙間から滴り落ちる水を拭きに行くのである。それほどオンボロだったのである。

そのようにボロい学校であったが、図書室の本はわりと充実していた。
もっとも、私は4年生まで、ほとんど本は読んだことがなかったのだけど・・・。

5年生の時、アルセーヌ・ルパン全集が入ってきた。
それが、この写真と同じ、ポプラ社版ルパン全集だった。

ビニール・カバー付き、豪華紙箱入りで、定価390円である。
そのほかに、ポプラ社では紙カバー付き、箱なしで、定価280円のシリーズもあった。
学校に入ってきたのは、390円のほうである。
全20巻のうちの、1〜13巻までが、各1冊ずつ入ってきたのだ。
なぜ13巻までしか入らなかったかというと、その時、まだ13巻までしか発売されていなかったからである(笑)。


クラスメイトのひとりで、一緒にそろばん塾に通っていたHという男が、280円のほうのルパンシリーズを、何冊か持っていた。ついでに、ホームズシリーズも何冊か持っていた。
学校にルパンシリーズが入荷した時、Hは私に「ルパンは面白いよ。ホームズより面白い。」と教えてくれた。
それまで、まともに本など読んだことがなかった私は、ルパンというものを知らなかった。
ホームズは、家に2冊ほどあったので、さすがに知っていたが、ルパンはそのとき初めて知ったのだった。
しかもHが言うには、ホームズより面白いということだ。
ホームズも読んだことはなかったけど、それより面白いのなら、読んでみようかな、と思って、Hと一緒に早速図書室に行ったのである。

ちょっとうろ覚えなのだが、5年生と6年生は、金曜か土曜が図書の貸出日だった。貸し出し期間は一週間。3・4年生は、火曜日あたりが貸出日だったと記憶している。
その貸出日の、20分休みと、昼休み、そして放課後に借りることができた。20分休みというのは、2時限目と3時限目のあいだの、長い休み時間で、児童のほとんどは校庭で遊んでいた。

そんな時に、Hに誘われたのである。

ところが。

ところが。

ところが、もうすでにルパン全集はなかったのである。
すべて借りられてしまっていたのだ。
それも、ほとんどが6年生に借りられてしまっていたのである。
ルパンは6年生にも大人気だったのだ。

これは大問題であった。

5年生は圧倒的に不利なのだ。

それは、教室の配置上の問題であった。

木造2階建ての、当時の我が校は、2階の東側から、3年生(3クラス)、6年生(3クラス)、4年生(3クラス)、5年生(3クラス)の順に教室が配置されていた。
階段は、東端、6年生の教室の前、4年生と5年生の教室のあいだ、西端と、4箇所あった。
6年生の教室の前の階段を降りると、目の前が職員室で、そのすぐ隣りが図書室だった。

このように、6年生は2時限目が終わるや否や、階段を駆け下り、ルパン全集をあっという間に借りていってしまうのだった。
5年生は惨敗であった。


それでも、2ヶ月たち3カ月たつと、6年生のルパン熱も少しづつ冷え始め、5年生も徐々にルパンを借りることができるようになってきた。


そして、ある時、ついに私もルパンを借りることができたのだ。

それは、忘れもしない、ルパン全集第6巻

   「恐怖の島」

であった。

うれしかった。
マジでうれしかった。
初めて手に取ったルパン全集は、ずっしりと手に重く、少年をワクワクさせるに十分の存在感があった。
その日は、一日中顔がほころびっ放しであった。

休み時間は、友人と遊ぶのに忙しかったので、本は家に帰ってから読み始めた。




で、どうだったかというと、全然わからなかった。

なぜか、いきなり物語のクライマックスのような文章から始まっているのである。

このように始まっている。


   一、地底の怪老人
    二少年の決闘
 両手足をきびしくしばられ、さるぐつわをかまされ、二階の窓ぎわにひざまずかされ、首を窓の手すりにむすびつけられたベロニクは、身動きもできず、顔を横にむけることもできないまま、じいっとしていた。
 二、三十分たった。呼吸の困難と、両ひざのいたさで、気がとおくなりそうだった。
 「ああ、もう死ぬんだわ。」
 かの女は目をつぶった。そのまぶたの裏にフランソワの顔が白くうかんだ。


こういう始まりかたである。
なにが何だか解らない。
巻頭の、「はじめに」というところを読むと、

 この物語は、三十棺桶島の第二部である。

と書いてある。
再び疑問。三十棺桶島とはなんぞや?。
巻末のルパン全集の広告を見ても、三十棺桶島などというタイトルはない。

しかたがないので、本を持って、Hの家まで遊びに行った。
そして、Hに教えてもらった。

それによると、ルパンの原作には、「三十棺桶島」という長編があって、このシリーズでは、一冊に収めきれないので、前半を「悪魔のサイン」、後半を「恐怖の島」と題して、2冊に分けて刊行しているというのだ。

私は、呆然として、そしてガッカリしてしまった。

今なら、「バッキャロー!」と言って、するどくツッコミを入れるところであるが、当時の純情でけなげな私は、黙ってうつむくしかなかった。
初めて借りられたルパンの本が、後編だったとは・・・。


しかし、ヒドイよな。
本のどこにも「悪魔のサイン」の後編です、とは書いてないのだから。
(書いてあるのは、「三十棺桶島」の第二部、という書き方だから、まず「三十棺桶島」を知らなければアウトである)
せめて同じタイトルにして「前編」・「後編」にするとか「上」・「下」にするとかしてくれれば、解るのに。

   プンプン!

仕方がないので、その本は、すぐに返却してしまった。


次に借りることが出来たのは、非常にラッキーなことに、第7巻

   「怪盗紳士」

であった。
これは、ルブランが最初に書いたルパンもので、面白いトリックや、ルパンの幼少のころのエピソードが載っている。
私はこれによって、完全にルパンにはまってしまったのである。


     −−−長くなりそうなので、次回につづく −−−

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2005/03/24 00:38

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